約 1,168,380 件
https://w.atwiki.jp/hutsunosammoner/pages/36.html
, -─ 77ー- 、 /;;;;;;;;;;;;;; \ /;;;;;;;;;;;;;;;;;;; i λ ' ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; | /! i ', .|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; | ./! / | | , ∧ |从z、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,z从ソ| ./ | / | | ヘ / ! .i从入{__,___ソ从爪 / | ./ | ./} |_,,,,,,∨__,,|_ノゞミ廴亙_j人亙ノ从ン 廴/ |/ |/ / _, イ´ / . /从} ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! . . . . .⌒ ̄`ヽ / / ≦´__ / . . .∧| J | | | | | | | | | し!_;. . . . . . . .7 / ム- , イ´ r'"`ーy‐-、_ノ i l ` ヾ ヘ/ ソ' ∨ | \. . . . / ;ィ-‐==- 、 ジャギ 強面のお巡りさん./ /ー- 、/ .} `ー、z_八 ∧j_>-‐'"`Y´ ̄} __ 悪人をバッタバッタとなぎ倒し、ということはあんまりない /ー- 、/ ̄`/ `ヽ /~´ レ-‐i─'" 酔っぱらって暴れたおっさんに説教したり /ー- 、/ ̄`ノ | て ィ 廴_}_y-── 度が過ぎたいたずら小僧に説教したり、そんな日々 /ー- 、/ ̄`ノ そ´{ | ∠´;;> {__l 自転車で毎日パトロールをする彼は町の人々にかなり. /__,≦ーュソ <;;;;入 .| ∨ 廴_l´ ̄ ̄ ̄ ノ 親しまれている / i! ⌒ ` |  ̄二二´ / ヘ | ゝ、__, 〉 l./ | 代 人 ノ-、ゾ __/ i | i! `ー‐- ..__ , ィ´匆}ヽ、____>‐"ヽ ト、 | l| ゞ、 ゞ 〉 | ヽ、_ | l| ヽ `ーt'"ー─一'" `ー─一イ_ノ /// | | l| '.し i く伊 i /. // | | l|ヘ \ ヽ、__ノ ヽ、__ノ `ー'" // | | l| rゞ `ーz く星>.人三ソ´ノ// | | l| { \ ヘ 人 ∨ / / // | | l|弋 }`ー'" `ー‐イ / // | | l| \ / ィ斗 / // | 商品リスト 21スレ目(実質22スレ目)744参照 錬気剣 3000円 錬剣術の素材 錬気槍 3000円 錬気斧 3000円 姫鶴一文字(槍) 5000円 錬剣術の素材&一分の魔脈(magの最大値+10%) 備前長船(剣) 6000円 錬剣術の素材&道具高揚(回復効果1.5倍) 仁王清綱(斧) 10000円 錬剣術の素材&報復の狼煙 (死亡時一度だけHP50%で復活・状態異常中不可) 普通のベスト 600円 物理ダメージ -1 紅蓮のベスト 600円 火炎ダメージ -1 氷結のベスト 600円 氷結ダメージ -1 雷電のベスト 600円 電撃ダメージ -1 疾風のベスト 600円 衝撃ダメージ -1 普通のマント 12000円 物理半減 紅蓮のマント 6000円 火炎半減 氷結のマント 6000円 氷結半減 雷電のマント 6000円 電撃半減 疾風のマント 6000円 衝撃半減 例の学帽 3000円 精神半減 着る寝袋 5000円 物理・衝撃半減・氷結・電撃吸収・火炎弱点 打撃・銃撃・防御不可
https://w.atwiki.jp/beybladecostrule/pages/110.html
ジャギードライバー フラット系ドライバーだが、軸先の円周部分がギザギザになっている。最大径はアサルトと同じ程度。 ギザギザは割と細かく、スパイクのように働くというよりは接地面を減らし、摩擦を減らしているような印象。バトル中もよく滑りながら相手に連続攻撃を仕掛けられる。 軌道 平行に撃つと外周をぐるぐると回り続ける。 斜め撃ちをすると中心をえぐるような軌道に変化する。 ドライバーや合わせるディスク、レイヤーによって適正な角度が違うので、練習されたし。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3359.html
ここでは朝も夜も意味がなかった。腕時計はあるが、こんなところでじっとしていると時間の感覚も薄れる。 本も無ければ音楽も無く、できることといえば、ただ思索のみ。 言えば差し入れてくれるかもしれないが、それは図々し過ぎるというもの。それに、そんな気分にはとてもなれない。 天井の小さな明かりは頼りないが、部屋はそれだけで余すところなく照らせる程度の広さしかなかった。 暗く冷たい壁が閉塞感を煽り、それから逃げるように目を閉じる。横向きになれば小さな光は届かず、すぐに暗闇が訪れた。 音も光もない世界で思考だけが残る。彼女がこんな世界で何を思い、何をしたかったのか、こうしていると少しだけ理解できた。 本当は今すぐ走り出したい。こんなところでじっとしている訳にはいかない。しかし込み上げてくる衝動は、無力さ故に押し殺すしかなく。 だからといってこの胸の疼きは止まるはずがないというのに。 もっと話しておけばよかった。そうすればこんなことにはならなかった。数えきれないほどの後悔。それも、もはや今更でしかない。 何故彼女はああなってしまったのか、未だに分からない。この靄が掛かったような気分はそのせいだ。 分からないことが多すぎる。その中で最も分からないのは彼女の気持ち、そして自分の気持ち。 闇の中から声が響き、声は自分を責め立てる。引き出そうとするのは償いの言葉。 しかし、それも罪悪感を充足させるためのものでしかないと知っていたから、敢えて答えることはしなかった。 やがて虚無からの声は輪郭を伴い、実体を形作る。 現れた姿はもう一人の自分自身だった. 第三話 凍てつく炎 圧迫されるような閉塞感。日光の届かない地下で、補う役割を果たせていない電灯。 鉄とコンクリートの色と臭いしかなく、薄暗さも相まって緊張がいや増す。 それが階段を降りたスバルの最初に感じた印象だった。近代的な造りである上階に比べて、 何故地下はこんなに前時代的な独房といった風なのか。尤も、融合される危険を鑑みれば下手に電子ロックにするよりもリスクは少ない。 融合体と接触、感染の疑いのある者は検査の後、48時間の隔離、監視態勢に置かれることになる。だが、今のスバルには関心のないことだった。 「ここだよ、スバル。入って」 先導するなのはによって開かれた独房の中にあるのは質素なベッドと、一角にはトイレであろうごく簡素な個室のみ。 他には見事なまでに何も無かった。無論窓も無く、ドアには小さな覗き窓がある。 「ごめんね、隔離室一杯でこんなところだけど。これから48時間経ったら出してあげるから我慢して」 少し申し訳なさそうにしているなのはに、スバルはろくに返事も返さない。ただ項垂れて指示に従うだけだった。 きっと自分の身体のことがXATに伝わることを、なるべく避けようと骨を折ったのだろうが、それすら今はどうでもいい。 「明日の朝また来るからね。今日はもうゆっくり休んで」 「はい……」 きっと自分は酷い顔をしている。思い切り泣いたせいだろう、身も心も疲弊していた。 ドアが閉まるのも構わず、スバルは力なくベッドに身を投げ出した。横たわってから、スバルはこれまでのことを思い出す。 病院を飛び出してティアナを捜したものの見つからず、結局最後に声を掛けてから数時間、雨の中を彷徨い歩いた。 病院に戻ると玄関先になのはが立っており、スバルを見るなり濡れるのも構わず駆け寄ってきた。スバルを見て絶句していたのは、ずぶ濡れの姿に対してだけではないだろう。 すぐにシャワーを浴びさせられ、車に乗った。車中でスバルは病院で起こった全てを話した。ティアナとの会話の一言一言まで全てを包み隠さず。 報告は要点を纏めて簡潔に。努めて事務的にまくしたてると、口を固く引き結ぶ。辛うじて涙は堪えられた。しかし、それもなのはが次の言葉を発するまでのことだった。 スバル同様に固く事務的な口調でなのはは告げた。 融合体と化したティアナが一般人とエリオに重傷を負わせたこと、そして生きていたヴァイスと一緒に走り去ったことを。 ティアナは間違いなく融合体となり、人を、仲間を殺そうとした。瞬間、頭をハンマーで殴られたような衝撃が走った。 それを聞かされた途端、堪えたものが溢れだす。なぜ泣いているのかも分からなくなるくらい涙ばかりが流れた。 胸が一杯で息が苦しかった。痛みを、悲しみを嗚咽に変えて吐き出さなければ呼吸が止まりそうなほどに。 そっと抱かれた肩から伝わる。本当はなのはも辛いのだと。 自分だけ泣くことは卑怯だと知りながら、車が地上本部に着くまでの間、スバルはなのはにすがりついて泣き喚いた。 そこでちょうど睡魔が訪れ、意識が遠のく。構わない、どうせこれ以上は何も考えたくなかったのだ。 スバルは抗うことなく眠りに落ちていく。目を閉じる時に見えた時計は22時05分を示していた。 ※ 夜も更け、人気の消えた街を見下ろしながら飛ぶ影が三つ。先頭を行くのは赤毛の活発そうな少女。 その後ろに茶髪の少女二人、一人はストレートのロング、一人はショートカット。戦闘機人オットー、ウェンディ、ディードの三人である。 上機嫌で跳ねるように飛ぶウェンディの手にはしっかりとロックの施されたケースが握られていた。 「いやー、最近は邪魔が入ることも無くなって随分と楽になったっスね」 レリック奪取の任を受け、今日向かったのがこの三名。これまでであれば魔導師たちの妨害を考え、多勢でそれなりに計画立てて行わなければいけなかった襲撃。 だが、今回は数体のガジェットと三人でも驚くほど簡単に成功した。 管理局は現在デモニアックの対処に追われ、こちらにまで手が回っておらず、目の上のたんこぶと言えた機動六課も、 現在は精力的に活動していないらしい、とはDr.スカリエッティの言である。 「これならドクターにも褒めてもらえる……って大丈夫っスか?」 ウェンディの後方に付いてきているオットーは口元を押さえ、荒い息を吐いている。明らかに顔も紅潮していた。 隣でディードが支えていなければ飛行も難しい様子だ。ディードは不安げな顔つきでオットーを励ましている。 「オットー、もう少しで着くから。急いでドクターに診てもらいましょう」 最近ウェンディはこの二人が嫌いではなかった。共に感情に乏しいが、お互いに支え合い、心を通わせている。 他者にはつれないが、なるほど、不器用なだけだと思えばその無愛想も微笑ましい。 当初は苦手であったが、今回一緒に作戦に当たった時にも見事なコンビネーションを発揮し、自分をサポートしてくれた。 表面上ではわからないが、ある意味では実に姉妹らしいと言える。 「それじゃ少し急ぐっスよ。ディード、スピード出せる?」 「ええ、頑張ってオットー」 日中、目的地までの移動中にデモニアックと接触、戦闘に突入した。管理局の目を引いてくれるのはありがたいが、当然近づけばこちらにも牙を剥いてくる。 単純な動きである為、コンビネーションで挑めば難しい相手ではないが、今回は流石に肝を冷やした。 意外にも粘られた為、乱戦になり後衛であったオットーまで肉薄されたのだ。 すかさずディードが、オットーと揉み合う融合体の背後に接近。一瞬にしてツインブレイズで首を刎ねた。 断面から噴き出す鮮血は人と同じ真紅。なんとも気分が悪くなる光景だった。 機械と融合した、人を超えし者。しかし自分達は奴らとは違う。あんな化物とは違う。 それは支え合うこの二人が表している。ウェンディにはそう思えてならなかった。 「で、どうなんスか、ドクター?」 「まあ、待ちたまえ。君達ももう休みなさい。もう少ししたら今日のデータを見せてもらおう」 ウェンディに見向きもせず、ドクターと呼ばれた紫髪の男性、ジェイル・スカリエッティは答える。その横には同じ髪色の淑やかな女性、ナンバーⅠウーノが寄り添っていた。 広い空間に並んだポッドには現在オットーしか入っていない。事情を聞いたスカリエッティはすぐにここへ誘導した。 普段自分達が使用している部屋とは違うのが気になったが、特別な機器でもあるのか、治療にはここが適していると言われた。 はぐらかされた気分だが、ウェンディも噛みつく理由がない。だが、これではまるで隔離だ。 オットーの入れられたポッドからは様々なコードが伸びており、スカリエッティはその前で操作しながら何やら思案していた。 唸ったり、時に首を捻ったり。その表情は千変万化であったが、唯一分かることはとても楽しそうだということ。 これ以上は話していても無駄だ、ウェンディは最後にオットーを一瞥して部屋を後にする。 「じゃあディードも行くっスよ」 オットーを見つめて動こうとしないディードの手を半ば無理やりに引いて。 放っておけばいつまでも立っていただろう。手を引かれながらも、ディードの視線がオットーから離れることは無い。 ウェンディの目には彼女の顔がとても脆く儚く映った。一瞬、自分達が戦闘機人であることを忘れされる程に。 ウェンディ達が退室してから、一時間もスカリエッティはモニターに釘付けになっている。隣に立っているウーノの事など目に入っていない。 ウーノは彼の秘書として情報処理は専門だったが、今回はまるで理解できなかった。作業速度といい、情報認識といい、機人の自分を上回っているため理解がなかなか追い付かない。 スカリエッティは誰にともなくぶつぶつと呟きながら、勝手に一人で先に進んでいく。 「うーむ、さっぱりわからない……」 「あの……オットーはどうなのでしょうか?」 「いや……そうか。これは……細胞の変化と増殖……生体部を侵食……機械部分も半ば……」 完全に没頭しているのか、スカリエッティはウーノの声に気付いてすらいない。こうなってしまっては放っておくしかないだろう。 玩具を手に入れた子供のようで少し微笑ましいとも思った。対象が妹であることを除けばだが。 「……なるほど。これは実に面白い……。……うん、大体わかった」 それから更に四十分が経過。ようやくスカリエッティはモニターから目を離し、軽く伸びをしたと思いきや、出口に向かって歩いて行く。 途中でウーノを振り返った彼の顔は上機嫌そのものだった。 「ああ、ウーノ。すまないが頼まれてほしい。ここの機器とシステムを全体から切り離して独立させてくれ。 それと、ここから外までの最短のルートを朝まで開放。そこから繋がるドアは全てロック、触れると電流が流れるように。できるかい?」 「ええ、2,3時間も頂ければ可能ですが……しかしなんの為に……?」 「すぐにわかるさ」 ウーノは思わず命じられるままに答えてしまったが、その意図は分からない。 カプセルの中のオットーは意識は無いが苦しそうに身を捩っている。スカリエッティを行かせてしまっていいものか、急に不安になってきた。 「あ、ドクター! オットーの処置はもうよろしいのですか?」 「一旦ウェンディ達のデータを抽出しよう。それからすぐに再開するよ。これは非常に興味深いから」 スカリエッティは今度は振り返ることなく答えた。去り際にもう一度、ウーノに言葉を残す。その言葉はウーノの不安を払拭するものではなく、更に波立たせた。 「ウーノ、それが終わったら君も休みたまえ。それ以降はくれぐれも私の許可なくここに立ち入らないように。妹達にもロックした箇所は連絡を、なんせ危険だからね」 危険というのは電流が、だろうか。それともこの部屋なのか。不安は晴れる訳もなく、ウーノは指示に従う他なかった。 ※ 目を開くと目の前に無機質な壁があった。どう見ても寮の自室ではない。 数秒して酷い頭痛によって意識の覚醒が促された。それによってスバルは昨晩の出来事を思い出す。天井の隅には小さな監視カメラがこちらを向いていた。 「そうか……あたしは……独房に入れられたんだっけ」 時計を見ると06時58分。普段ならとっくに起きている時間。こんなに眠ったのは随分と久し振りな気がした。 起き上がることなく壁を見つめる。部屋の端だというのに、向かい側の壁が近いことで改めて部屋の狭さを実感した。 一人ならこの程度の狭さでも苦にならない。むしろ隔離室や寮の部屋の方が広く閑散として思える。 身体には気だるさが残り、まだまだ寝ていたくなる。人並み外れた頑丈さが自慢の身体は、心に引きずられたのか想像以上に錆びついていた。 脳が考えることを拒否し、再び眠りに落ちようとした時、ドアが軽くノックされた。 「スバル、もう起きてる?」 確認するまでもない、なのはだ。声の調子はやや重く、気遣ってくれていることが分かる。スバルは急いで起き上がり、挨拶を返した。 「おはようございます、なのはさん……と、フェイトさんも」 「うん……おはよう、スバル」 覗き窓から外を窺うと、なのはの後ろにフェイトも立っていた。声も表情もなのはよりずっと暗い。 思い当たる節はエリオの件しかない。スバルも、エリオがどうしているのか気になっていた。 「あの……エリオはどうしてるんですか?」 フェイトの表情が更に曇る。なのははフェイトが答えようとしないのを見て、話し始めた。フェイトの様子からして悪い報告かと、自然とスバルも身構えてしまう。 「右腕は骨折はしてたけど、撃たれた傷は骨や大きな血管を外れてるから、治癒魔法と合わせて治療に専念すれば二週間程度でほぼ回復するみたい」 「よかった……」 スバルはほっと胸を撫で下ろした。エリオが想像より軽傷だったことは勿論、ここでエリオが重傷であればティアナの罪は更に重くなる。 しかし、それを聞いたフェイトは、静かにドアに詰め寄った。 「よくないよ! ヴァイス君が止めなかったらエリオは殺されてたんだよ? ティアナに!」 これまで伏せられていた顔はスバルを睨んでいる。フェイトにこんな目で見られたのは初めてのことだった。 はっとなって頭を下げるスバル。フェイトはティアナに対して敵愾心を抱いても仕方ない。我が子のように可愛がっていたエリオが殺されかけたのだから。 「すいません……あたしよかったなんて言って……」 「フェイトちゃん、スバルはそんなつもりで言ったんじゃないよ」 なのはに仲裁されるまでもなく、フェイトも自分が熱くなっていることは分かっていたのだろう。罰の悪そうな顔でドアに背中を向けた。 「わかってる……ごめん、なのは、スバル。私先に戻ってるから……」 フェイトが去ってからしばらく沈黙が流れたが、やがてなのはから話しだした。 「ごめんね。フェイトちゃんあんまり寝てないみたいで、ちょっと気が立ってるから……」 「いえ……あたしの方こそ悪かったんです……」 再びの沈黙。これではいけないと思っても、スバルから積極的に話すことは憚られた。 それを見て、なのはも困ったように溜息を一つ。 「じゃあ本題に入るね。研究棟の隔離室じゃこうやって話せないから。ここでもモニターはできるし、私達が交代で様子見に来るってことで無理言ったんだよ」 前置きを済ませたなのはは軽く頬を掻く。その様はどこか迷っているようにも見えた。 「そうだね……言おうかどうか迷ったんだけど、スバルにも考えてもらわなきゃいけないことだし、考えるにはいい機会だから」 そう言って、なのはなかなか本題に入ろうとしない。彼女がこんなに踏ん切りの悪い話し方をすることはまずない。それだけで加速度的に鼓動が早まる。 「……今はティアナとヴァイス君のことは六課の人間しか知らない。ただ、人間の姿と理性を持った融合体の存在はXATにも報告しなきゃいけないし、 そうなったらはやてちゃんも二人の顔と名前を出さなきゃいけない……」 「そんな……」 そんなことになれば二人は融合体として狩られてしまう。よしんば狩られなかったとしても、局からは二度と人として見られないだろう。 「落ち着いて、スバル。本当ならすぐにでも報告するところを、はやてちゃんは明後日の対策会議まで伏せておくつもり。 それは私達でティアナとヴァイス君を見つける為。そして……それができなかった場合、フォワードのみんなに覚悟を決めてもらう為の時間なんだよ」 今度こそ嫌な予感がする。既に胸の鼓動の音は最高潮に達しそうだ。 「覚悟って……まさか……」 なのはの顔に影が差す。沈痛な表情からは次に言う言葉が容易に想像がつく。 しかし、言わないで欲しかった。 「最悪、ティアナとヴァイス君を……斃さなきゃいけないってこと」 スバルはドアに駆け寄った。その勢いにもなのはは全く動じない。 なのはがこんなことを言うとは思えなかった。いつだって部下や仲間を思いやってくれると信じていたのに。 「なのはさん! なのはさんも昔はフェイトさんやヴィータ副隊長と敵同士だったんでしょう!?」 「勿論できる限りのことはするつもり。でも昔のフェイトちゃんやヴィータちゃんの時とは訳が違う。 どっちも譲れない目的があってぶつかっちゃったけど、それでも無駄な犠牲は出そうとしなかったし、力ずくでも話すことはできた。でも……今度は違う」 なのははスバルから目を逸らさない。その目には確かな意志が感じられた。スバルには何を言っても彼女の心を動かせる自信はなかった。 「融合体はただ傷つけて殺すだけだから。言葉だって通じない。戦闘機人とも違うよ」 「でも……ティアはヴァイス陸曹のおかげで理性を取り戻したって……」 「ティアナと話せれば、こちらに従ってくれればいい。でも、現にエリオを撃ったのは事実。 融合体に関しては分からないことが多すぎるの。人と融合体の姿を自由に使い分けて殺戮を始めればどうなるか……私達は最悪の状況も考えておかなくちゃ」 彼女の口から出る言葉はことごとく正論。これでも譲歩している方だと思う。 だからといってスバルも後には退けない。 「でも……それで諦めちゃうんですか!? フェイトさんやヴィータ副隊長の時だって諦めずに話そうとしたんじゃないんですか!?」 「言ったでしょ、融合体は人を殺すだけだって。放っておいたら……私達が迷ってる間に何人もの人が犠牲になる……! 今のティアナは強いよ。拘束しようとしたり、諦めずに話そうとする余裕があるとは限らない」 これまでも融合体の一回の出現で、五人、十人の死傷者が出ることはざらにある。もしも取り逃がした場合のことを考えれば、それだけ人が死ぬ。 ましてや魔導師の身体と武器、術を持っているのだから被害はこれまでの比ではない。 局員がデバイスごと融合体になって殺戮を始めたと、ニュースにでもなれば沽券に関わる。故にXATも血眼になって二人を追うだろう。 「たとえ、拘束して連れ帰ったところでどうするの? もしも逃げられて、本部や六課のコンピュータに融合されれば損害は計り知れない」 「で、でも……ゲルトの例だってあるじゃないですか」 「それはゲルトが当初から協力的な姿勢を見せてるからでしょ。二人に重傷を負わせて逃亡中のティアナを一緒にはできない」 完全な正論、ぐうの音も出ないとはこのことだ。過去のなのは自身の例を出せば分かってくれるかと思ったが甘かった。 咄嗟の切り札さえ論破され、反論が出てこないままスバルは押し黙った。 それでも、どうしても承服できない。そうして結局最後に出てきたのは、身勝手な感情でしかなかった。 「それじゃあ……それじゃあティアはどうなるんですか? 融合体になって、あたし達に殺されるなんて……そんなの残酷過ぎるじゃないですか!!」 「他の融合体は殺しておきながら、仲間だったら助けたい。それは残酷じゃないの!?」 病院でティアナと向き合った時と同じ感覚。 今の自分は完全に頭に血が上っている。胸の内から湧き上がる、得体の知れない何かに急きたてられている。 その先を口にするな、と冷静な自分は言う。 それでもスバルには止められない。それも、あの時と同じだった。 「それはおかしいですか!? あたしは今もティアを仲間だと思ってます! たとえなのはさんにとってティアがもう融合体でしかなかったとしても!!」 「――ッ!!」 しまった、と我に帰った時には既に遅かった。 耳をつんざくような轟音。 金属のドアがへこむかと思うほどの音が地下に響き渡り、ビリビリと振動が空気を伝う。強烈な音と振動と迫力が、スバルの身体まで激しく震わせる。 なのはがドアを殴ったのだと気付いた時、窓になのはの顔が覗いた。 激情というのは目に見えるものだ、とスバルは思った。 そこにあるのは純粋な怒り。 なのはの視線は烈火もかくやと赤々とした炎を宿し、それでいて寒気がするような冷気も纏って、スバルを突き刺す。 あの時、ティアナと一緒になのはの教導を無視して無茶をした模擬戦。あの時以上になのはが怒っている。眉間に皺を寄せ、本気でスバルを睨みつけている。 言葉にするより遥かに重く鋭い。燃え滾るような眼差しが何より雄弁になのはの感情を物語っている。 つい口を滑らせて出た言葉は、なのはを怒らせるには十分過ぎる侮辱だったらしい。 残響が止んでも恐怖に戦慄く身体はいつまで経っても治まらない。 明らかな失言。謝らなければ、そう思っているのに声が出てくれない。それは単に恐怖によるものではなく。 ただひたすら申し訳なくて、自責の念で頭がいっぱいになった。それがスバルを動かせなかった。 スバルは、昨夜なのはが泣いていた自分を慰めてくれたことを思い出した。 なのはが辛くないはずがない。その結論に至るまで、それを告げるまでには苦悩があったに違いない。そんなことは彼女の性格を考えれば簡単なはずなのに。 どうして考えが回らなかったのか。彼女はティアナより、自分より、誰よりなのは自身に激怒しているのだと。 三十秒ほど経ったろうか。スバルが言葉に詰まっていると、なのはの怒りの形相がふっと脱力した。 風船が萎むように張りつめた気配が消え、残ったのは悲しげな瞳。 「今日はもう来ない。私もスバルも頭冷やして……明日の夜、解放された時スバルの考えを聞くよ。どうあれ覚悟だけはしておいて」 覚悟――いざとなればティアナを殺すのか、あくまで助けることに拘るのか。どちらにせよ彼女の前ではっきりと宣言しなければならない。 「……できれば話したくなかった。私の答えに左右されないでほしかったから。誰にも寄りかからずに、スバルの考えで決めて。 ただし、もしも心が決まってなかったら、ティアナのことは勿論、出動からは全部外すからね」 「そんな……」 スバルを除けば、動けるのは隊長達とキャロだけということになってしまう。ただでさえ激化している融合体事件に対し、動けるのがそれだけではあまりに心許ない。 「あやふやな気持ちじゃ戦っても死ぬだけ。どんなに苦しくても、死ぬと分かっている相手と一緒には戦えないから」 それだけ言うと、なのはの目が窓から離れる。足音が遠ざかっていくのを感じながら、スバルはその場に立ち尽くした。 残り時間は約39時間。それまでに自分は答えを出せるのか、胸に問いかけても答えは返らなかった。 ※ ミッドチルダ東部の森林、木々が生い茂る山地には似つかわしくない女性が一人。白衣を羽織りメガネを掛けてはいるが、知的さを感じる者は少ないだろう。 むしろ胸元まで開いた扇情的な服から覗く褐色の肌が、妖艶な雰囲気を漂わせている。 大木にもたれかかり、朝日に目を細めながら、さも退屈そうに周囲をぐるりと見回した。 「この辺りのどこかだと思ったのだけれど……」 そう一人ごちていると、遠くで茂みがざわめいた。枝の折れる音、葉の揺れる音が連続して近づいている。 周辺には野生動物も多数生息しているが、これは薮だろうが何だろうがお構いなしだ。相当な速さで、おそらくは大きさもそれなりだろう。 女は音に向き直った。靴はハイヒール、手も白衣のポケットに収めたままで、それでも動じる様子は無い。 音は気配と共に膨れ上がり、黒い影が目の前に躍り出る。 それは融合体とも呼ばれる、金属のような骨格を持った悪魔、デモニアック。白を基調とした外観、胸部から察するに女性型。 デモニアックはこちらを獲物と見定め、凄まじい速度で腕を薙ぎ払う。 これまで数多のデモニアックを見てきたが、その誰よりも速い。匹敵するものがあるとすれば自分の主、そしてその追跡者、そして自身ぐらいだ。 ふわりと女の身体が浮いた。風に揺れる柳の葉の様に腕は身体を掠め、腕を振り切った時には既に女は射程外にある。 勢い余った腕は女の背後にあった大木にめり込み、半ばまで抉られた大木は葉を舞い散らしながら倒れた。 「速さも力も桁違い、素体が素晴らしいとここまで違うのね」 女は初めて笑顔を浮かべた。微笑みは薄く伸ばして張り付けたような、少なくとも好意的なものではない。 事実、彼女にとってはよくできた実験動物に過ぎなかった。口元とは反対に、目は冷徹にその性能を分析している。 能力は主には遥か遠く及ばないものの、自分には手が届く距離だ。これに武器が加わればまた話は違う。 例えば今相手の掌に浮かんだものだ。翡翠色に発光する二つのリングが重なって回っている。どんな兵器か知らないが、使われれば互角か或いは上回るか。 しかし、自分とこのデモニアックの間には決定的な差がある。それは決して埋まらない距離、絶対的な位階の差。 自分はブラスレイターであり、これは違うということ。 デモニアックが掌の武器を使おうとするより早く、女はポケットの手を振り抜いた。瞬間、女を中心に広がるプレッシャー。波紋のように伝わり、風もないのに木々を揺らした。 「さあ、案内して頂戴。あなたの御主人様のところへ」 そう言って手を差し出す。途端にデモニアックは攻撃態勢を解き、女に背を向けて歩きだした。女はただ歩いてその後をついて行く。 「場所と入口さえ教えてくれればそれでいいわ。後はあなたの好きなように踊りなさい。ただし……」 再度女の口が歪む。そこに計算は無く、あるのは純粋な期待。 先ほどとは違い、今度は目まで笑っていた。これから起こることが心底楽しみだと言わんばかりに。 「そのうち、黒く蒼いボディのデモニアックが現れるわ。その男だけは殺しなさい。必ず、確実にね」 ※ デモニアックは次々と通路のドアに触れては電流に弾かれ、やがて風の流れを感じ取ったのか、脇目も振らず走り出した。 向かう先に開かれた出口からは、朝の光が差し込んでいる。 「これが午前07時18分の映像です。つまり今から42分前の事ですね……」 そう語るウーノの表情は暗く、モニターを眺める九人は一様に驚愕を表している。 通路の監視カメラにはデモニアックの徘徊する映像が記録され、オットーの収容されたポッドが内側から破壊されていたのは全員が直接確認している。 これが示す事実を誰もが理解しながらも、口にする者はいない。 「何ですの、これは……」 あのクアットロですら驚きを隠せずに目を見開いている。すると、動揺することもなかったスカリエッティが口を開いた。 「ふむ……オットーはデモナイズ、つまりデモニアックになった可能性が極めて高いということだ。クアットロ……君なら分かっていると思ったんだが?」 「しかし、ドクター! 何故オットーが!?」 声を荒げたのはトーレ。一人を除いた全員が同じようにスカリエッティに目を向ける。 痛いほどの視線を向けられても彼は難なく受け止め、平然と言った。 「オットーは昨日デモニアックと戦闘している。その時感染したと考えるのが自然だろう」 「でも戦闘ならあたしやディードだって――」 言い掛けてウェンディは、ディードの肩が一瞬震えたのを見逃さなかった。スカリエッティも見ずにモニターを凝視していたディードは、悪戯がばれた時の子供みたく、肩を竦ませた。 「それよりも今はオットーをどうするかが先決ではないでしょうか?」 と、セッテ。クアットロが真っ先に頷き、他の姉妹もぎこちなく続く。 セッテがこんな時でも冷静なのは頼もしくもあり怖くもある、とウェンディは感じた。 「そうだね……ディード、君はどう思う?」 「え……私は、その……オットーを保護して治療をすべきかと……」 「治療? あれはもうそんなレベルじゃないわ」 おずおずと話し出すディードの意見をクアットロが一笑に付す。それきりディードは黙ってしまった。スカリエッティは何の為にディードに訊ねたのか、ウェンディには分からなかった。 こういう場合はトーレが発言権を持つことが多く、それは今回も例外ではなかった。 「オットーを融合体として破壊するしかないのでしょうか……。ISもあります、管理局に回収でもされれば厄介ですが」 「いえ、捕獲が可能なら試みるべきかと。オットーも重要な戦力の内です」 苦々しげに言うトーレだが、すぐさまそれに反論したのはチンク。両者は自然と睨み合い、一時沈黙が支配するが、 数秒の後、スカリエッティの仲裁によってそれは破られた。 「それなら君達全員で行きたまえ。実際に見なければ分からないこともある。捕獲か破壊か、判断は現場に任せよう」 「了解しました」 トーレ達が言うが早いか、ディードが飛び出した。ウェンディと他の姉妹も同様に走りだす。 破壊にせよ、捕獲にせよ早いに越したことは無い。なるべくXATや魔導師が嗅ぎ付けるまでに終わらせたいと、その思いだけは全員に共通していた。 ※ 朝の街が人々の動き出す熱で徐々に始動しようとしていた頃、人波に紛れて歩く男女が二人。 私服姿で並んで歩くティアナとヴァイス、はたから見ればその様子は仲睦まじく見えるかもしれないが、当人達にとっては気まずい雰囲気が流れていた。 「おい、大丈夫か、ティアナ?」 「…………はい、すいません!」 ヴァイスが呼びかけてから反応を返すまでに数秒を要した。ぼんやりと歩きながら船を漕いでいたところ、どうやら寝不足らしい。 昨晩、自分が傍にいることで安心できたのか、寝入りは早かった。身体の疲労や心労も大きかったのだろう。 しかし数時間寝たかと思えば起き上がり、それ以降はたぶん眠らず、朝まで頭を抱えていたようだ。 一度目が覚めると思いだしてしまったらしい。昨日の今日で仕方ないことではあるが。 「飯でも食って目、覚まそうぜ」 ヴァイスは手近な喫茶店を指してティアナを促した。ティアナも無言で頷き、駆け足で後を付いてくる。 ヴァイスとてなんとかしてやりたいと考えている。しかし不可抗力であるとはいえ、ティアナが罪を犯してしまったことは事実。 それに対して慰めを口にしても余計負担を掛ける気がしてならなかった。 席に座りモーニングを注文すると、それきり会話が無くなる。 元々思い悩むタイプの彼女のこと、きっと今も頭の中で様々なことが渦巻いているに違いない。 自分にできることは、精々が現実的な問題から彼女を守る程度。気の利いたアドバイスもできず、それしかできない自分が歯痒い。 「あたし達……これからどうすればいいんでしょうか?」 ティアナの突然の質問にヴァイスは即座に返答できなかった。少し考えて、当面の目的を放す。 「まずはゲルトを探す。所属してたチームに連絡してだな……局の者だって言えば住所くらい聞き出せるだろう」 バイクレースのチャンピオン、ゲルト・フレンツェンは事故の後、融合体として舞い戻った。 通常の融合体とはやや違う姿に変身、融合体を撃破し、人間に戻った彼は巷では英雄として持て囃されている。 まず同類と考えていいだろう。XATに拘束されている可能性もあるが、話を聞ければ手掛かりが得られるかもしれない。 「そうじゃないんです。あたし達がこれから何を目的にすればいいのかって……」 「お前が聞きたいのはあたし達……じゃなくて”あたしが”だろ?」 図星を突かれたのか、ティアナは大きく目を見開き黙り込む。 この融合体の出現には誰か糸を引いている者がいる。ここ最近の大量出現や、ティアナ達が遭遇した事件を考えればそれは明らかだ。 今となっては死人だが、この立場でしか見えないこともあるはず。情報を得て影ながら六課に協力できれば、そうヴァイスは考えていた。 それを考えることができたのは自分を助けた男のおかげであり、二週間という時間のおかげ。だが、ティアナはまだそこまで考えられず戸惑っている。 ヴァイスは苦笑しながらコーヒーを口に運んだ。 「焦るこたぁない。ゆっくり考えればいいさ。幸い金も下ろせたしな」 だが、ヴァイスは自分の考えをティアナに言うつもりは無い。あくまで目先の行動の提案に留めておく。 これまで目標に一途に生きてきて、それを失った今、誰かから道を示されるのは甘い毒だ。聞こえのいい言葉で囁かれればいとも簡単に、ころりと転んでしまうだろう。 時間が必要なのだ。そうすれば聡い彼女のこと、勝手に自分で答えを見つけて立ち上がれる。それまではあらゆる障害は自分が排除しよう。 それにもしもティアナが何もかもから逃げたいというのなら、それに付き合うつもりでもいた。 「でも、あたし達XATに追われるんじゃないでしょうか……」 「だろうな。でもミッドも広い。XATだって暇じゃないんだ」 ここはミッドチルダの東部。昨夜行き先を決める際、中央のクラナガン、病院のある北部ベルカ地区、 六課隊舎があるのが南よりなので、東西南北の内これらを避けた西か東か二択の結果だ。 それにここらは山に程近い市街地。融合した結果か、これまでもデバイスで位置を追われていないのだから、すぐに見つかる可能性は低いと思われた。 「目立つことをしなければそうそう見つかるとは……」 突如、ヴァイス達の喫茶店から見て道路を挟んで隣の店が吹き飛んだ。爆風は通りを越えてガラスを震わせた。 続け様にあちこちで爆発が起き、火の手が上がる。たちまち悲鳴は一帯に伝播し、それも車の衝突によって掻き消された。 雨のように翠の光が降り注ぐ。人も建物も区別なく、等しく破壊をもたらす。 ゆっくりと空から舞い降りる白い身体は一見すると天使。気配を悟ったのかこちらを向いた顔は間違いなく悪魔だった。 「伏せろ!!」 言うより速く、ティアナはテーブルの影に転がり込んでいた。一瞬遅れてヴァイスがそこへ覆い被さるように飛びこむのと、光線が窓を砕くのはほぼ同時だった。 爆音と、ガラスが一斉に割れる音で一時的に聴覚が麻痺する。頭を振って感覚が戻るのを待つが、追撃はいつまで経っても来ない。 やがて離れた場所で爆発が起こる。どうやら無差別かつ適当に暴れているだけらしい。 顔を上げると、店内は滅茶苦茶に破壊されていた。ガラスと言うガラスは割れ、ヴァイスとティアナ以外は全員倒れ、呻き声を上げている。 起き上がり、外を見たヴァイスは思った。店内の状況など遥かにましだったのだと。 ざっと数えても十人以上が路上に横たわっている。しかし数に数えられない、原形を留めていない者も散見された。 「ティアナ! 大丈夫か!?」 「はい、あたしは大丈夫です……」 ヴァイスはほんの十数分前と同じ言葉を自分の下に倒れている少女に掛けた。 流石はフォワードである。ティアナは自分よりも反応が速く、衝撃によるダメージも少ない。 「仕方ねえ……ティアナ、俺達で奴を引きつけるぞ! XATか六課が来るまででいい……んだが……」 ストームレイダーを起動、柱の陰に隠れながら振り向くヴァイス。だが、最後まで言い切ることはできなかった。 ティアナは両手を見つめて、わなわなと震えている。ヴァイスの言葉などまるで耳に入っていない。 「ごめんなさい! ヴァイス陸曹……あたし、できません……!」 「あぁ!?」 思わず間の抜けた声が飛び出す。この期に及んで何を言っているのかと思ったが、その顔色を見ては何も言えなくなった。 蒼白に染まった顔に浮かぶのは確かな恐怖。その目には自分の手がどう見えているのだろうか。 「あたし……エリオと戦う時、クロスミラージュと融合して無理やり黙らせたんです……。 いえ……喋っていても同じかもしれない。今クロスミラージュで戦ったらあたし……今度こそ戻れないんじゃないかって……!」 そう言ってティアナは顔面を両手で覆った。 激しく動揺している状態の説明は要領を得ないというか、さっぱりわからなかった。だが、おそらくはこうだ。 AIの音声を切るのは簡単だ、一言黙れと命じればいい。それをティアナは融合することでプログラムを弄った。 尤もそれ自体は、例えるならスイッチを切るのではなく、配線を外したようなもの。繋ぎ直せば、すなわち融合すれば簡単に元通りにできる。だが、それが怖くてできない。 殴ることも撃つことも人にできる。融合することは融合体にしかできない。つまり、ある意味で融合は人でなくなった明確な証と言える。 だからヴァイスも、必要に迫られない限りは忌避してきた。 そして物言わぬ武器でしかないクロスミラージュで戦えば、再び理性を失った狂戦士に立ち戻ってしまうかもしれない。それも怖いという訳だ。 或いは、クロスミラージュは恨み言こそ言わなくても、行動に対する指摘や、説明の要求をしてくる可能性はある。 ティアナにとってみれば、淡々とそんなことを言われるのは傷を抉られるのに等しい。 「……ならお前は動ける人間を連れて隠れてろ! 俺一人でやる!」 「すみません……」 わかっている、ティアナを責めても仕方がない。暴走する危険を孕んでいるのは自分とて例外ではないのだから。 ヴァイスはそう言い捨てて、割れた窓から通りを警戒する。打ち捨てられた骸や車は数を増し、爆音は遠ざかり、悲鳴は聞こえてこなかった。 見た目は普通の融合体のようだが、飛行していたこと、そして光線を撃ってきたことから考えてやはり普通ではない。 「くそっ、俺だけで抑えられるのかよ……」 おそらく身体能力も通常より優れているであろう融合体。それに対してこちらは一人きり。ティアナと二人で戦っても勝てるかどうか危うい相手に不安は隠せなかった。 表に出て曲がり角から顔を出すと、100m程先に融合体の姿があった。動くものはあらかた殺し尽くしたと、獲物を求めるように徘徊している。 正面からでは不利、勝つには狙撃しかない。ヴァイスは角からスコープを覗きこむが、上手く狙いが付けられない。 動きが不規則過ぎる。リスクを鑑みれば絶対に外すわけにはいかないのだから。 不意に視界に影が落ちた。この地獄には不釣り合いな陽光を一瞬遮ったそれは、同じく太陽の下に不似合いな黒い悪魔。 炎を噴射する大型のバイクは、通りを塞いでいた無人の車ごとヴァイスの頭上を飛び越え、着地。こちらを見向きもせず、融合体へと向かっていく。 ヴァイスはかつて一度だけ、その姿を見たことがあった。 前へ 次へ 目次へ
https://w.atwiki.jp/hokutomusou/pages/96.html
サウザーの章(全5話)第1話 行進の始まり 第2話 非情の帝王! 第3話 仁星は光を残す 第4話 天をつかむ将星! 最終話 愛深きゆえに戦う! _コメント ↓ サウザーの章(全5話) 第1話 行進の始まり ミッション攻略 ☆拳王軍よりも先に奇跡の村に侵入せよ! ☆村侵入後、ハイウェイ上の黄拠点に星持ち ☆村侵入後、自警団を撃破し、トキをいぶり出せ! ☆自警団撃破後、リュウガを撃破せよ! ☆拳王軍の中ボス3人撃破で中央右村入口あたりの拠点に星持ち ☆リュウガ撃破後、潜伏地点を回り、トキの情報を入手せよ! ☆全拠点制圧で中央右村入口あたりの拠点に星持ち 目次へ戻る 第2話 非情の帝王! ミッション攻略 シン第2章とは最初のミッションが異なるほかは同じ ☆開始直後、奇襲地点を制圧せよ! ☆奇襲地点制圧後、中央上の行き詰まりに星持ち ☆奇襲地点制圧後、中央上の拠点に近づくと同じ場所に星持ち ☆奇襲地点制圧後、村を占拠する敵将○○を撃破せよ! ☆敵将撃破後、左の行き詰まりに星持ち ☆敵将撃破後、ジードを撃破せよ! ☆ジード撃破後、サウザー初期位置からチョイ左下の自拠点に近づくと星持ち 目次へ戻る 第3話 仁星は光を残す ミッション攻略 レイ2話とほぼ同じ ☆開始直後、拳王軍の拠点を制圧せよ! ☆拠点制圧後、マミヤを援護し、ウイグルを撃破せよ! ☆ウイグル撃破後、反乱した聖帝軍を殲滅せよ! ☆右上拠点接近で同じ場所に星持ち ☆下、右から2番目の拠点接近で星持ち ☆拠点半数制圧?後、中央上あたりの拠点(街じゃないほう)から星持ち ☆拳王軍の将○○を撃破し、門を突破せよ! 目次へ戻る 第4話 天をつかむ将星! ミッション攻略 レイ3話、シン4話とまったく同じ ☆開始直後、北斗軍の将を殲滅し、門を突破せよ! ☆突破後、ジャギを撃破し、マミヤへの接近を阻止せよ! ☆中央の敵拠点に近づくとその場所に星持ち ☆拠点6制圧で右上拠点に星持ち ☆ジャギ撃破後、レイの単騎突撃を援護し、ケンシロウを撃破せよ! ☆ケンシロウ撃破後、トキを撃破せよ! ☆トキ撃破後、ジャギを撃破し、核の起動を阻止せよ! 目次へ戻る 最終話 愛深きゆえに戦う! ☆シンを撃破せよ ☆レイを撃破せよ ☆ユダを撃破せよ ☆マミヤを撃破せよ ☆レイのエリアに☆持ち出現 ☆マミヤのエリア(右端)に近づくと☆持ち出現 ☆マミヤを探し出せ 目次へ戻る _コメント ↓ サウザー第1章行進の始まりの最後7つ目のミッションが発生しません。 -- (名無しさん) 2010-04-22 07 16 07 サウザーのミッションが1つ出ない・・・。誰か教えてください。 -- (名無しさん) 2010-05-19 20 53 19 サウザー最終話ミッション ユダの工作阻止したらでました。 -- (名無しさん) 2010-05-21 23 21 15 非情だろwww非常じゃねえぞwww -- (ローディー) 2010-12-29 13 56 39 第一話の最後の☆、どうやら奇跡の村入り口付近の高速道路の橋脚を壊すのと関係があるらしい。(近くに鉄骨落ちてるから、それで殴る) -- (名無しさん) 2011-06-04 00 31 04 俺の友達わ日本語と英語で日本語全くりしてる -- (佳和) 2012-04-01 22 34 07 ミッション2の「自警団を撃破し、トキをいぶりだせ!」までに 「☆持ち」が3人 ・ミッション1をクリアで出現する肥満☆持ち一人 ・同じくミッション1クリア後にすべての拠点を制圧で出現する標準型☆持ち一人 ・遊撃軍団を4人以上撃破で標準型☆持ち一人 ミッション2をクリアしてしまうと、ミッション3「リュウガを撃破せよ」が発生してしまう為 肝心なリュウガや味方将が寝返って☆持ち条件が達成出来なくなる模様 -- (2ch) 2012-04-22 21 43 41 星持ち出現は反乱した聖帝軍を殲滅せよ!を終えると出てこないから注意。 -- (何) 2020-03-22 15 07 15 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/zenzen53/pages/176.html
ジャギ 登場作品 北斗の拳 種族 人間 性別 男性 一人称 おれ 二人称 おまえ 拳法 北斗神拳、南斗聖拳 概要 ケンシロウの義兄。ラオウ、トキの義弟。リュウケンの養子 「兄より優れた弟など存在しない」というのが信条である悪漢。 その根拠のない信条のため、ケンシロウが北斗神拳伝承者に選ばれたとき、 兄であるラオウとトキの下に向かいケンシロウが伝承者にふさわしくないことを主張した。 その後ケンシロウをショットガンで脅し伝承者辞退を迫るが、逆に返り討ちにされ秘孔を突かれ、顔をひどく変形させられる。 それ以来ケンシロウを恨んでおり、鉄の仮面を被り、胸に七つの傷を自分でつけケンシロウの名を騙り残虐非道の振る舞いをする。 外見 牙が生えたような黒いヘルメットを被っている。 更に黒のレザーベストとレザーパンツ、肩と脛にはスパイクのあるプロテクターを身に付け、腰にショットガンをぶら下げている。 ヘルメットの下の素顔は、でこぼこになっており、膨張する頭頂部を押さえるために、網目状の鉄板が埋め込んである。 性格 短気で暴力的。更に嫉妬深く、プライドが高い。 自分の思想や考えに疑問を抱かない点から、ナルシストの嫌いも見受けられる。 しかし、決して短慮ではなく、敵を騙したり、罠に嵌めたりと狡猾な面も併せ持つ。 台詞 「おい おまえ! おれの名をいってみろ!!」 「兄よりすぐれた弟なぞ存在しねえ!!」 「うるせえ おれは拳法がすべてだとは思ってねえんだ要は強ければいいんだ どんな手を使おうが勝てばいい! それがすべてだ!! おれさまが伝承すれば北斗神拳はますます強くなる!!」 「なぜあきらめる必要がある おまえもあのケンシロウの甘さは知っていよう 今の時代をあいつでは生き抜いていくことはできん!!となればユリアは必ず だれかの手に落ちる!!それでもいいのか!! おまえほどの男がなにを迷うことがある! 奪いとれ 今は悪魔がほほえむ時代なんだ!!」 拳法 北斗神拳 拳法に加えて、様々な武器を多様する戦闘スタイル。 原作ではショットガン、含み針、ガソリンなどを使った。 拳法の腕前は、他の義兄弟に大きく水を開けられているが、別段弱くはなく、一般人からしてみれば、十分に脅威のある強さ。 南斗聖拳 スロウな南斗聖拳を使う。 威力はそこそこだが、そのスピードはケンシロウの口から思わずアクビが出るほど遅い。 + 本ロワにおけるネタバレ 本ロワにおける動向 初登場話 020:Wild World 死亡話 020:Wild World 登場話数 1 登場時期 詳細
https://w.atwiki.jp/yaruidol/pages/75.html
,. '' ´  ̄ ` .、 / ヽ / } l ゝ---- ι | ) ◯ ○ ( ,l η ||||||| ゝ ゝ---η. ||||||| ゝ /≦ ヽ .| | ≧ { l l |* *| | l { .l l .| * | .| l / l l | * | l l l ---l l-- -l l | `^^ `^ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 名前:ジャギ DLv:--- アイドルランク:--- 専用スキル【CP:60/100】 『俺の名をいってみろ』…自分のエクストラから特殊召喚時発動可能 相手は特殊召喚されるモンスターを宣言することができる。 言えなかった時や間違えた場合 自分は1ドロー 正解した場合相手がが1ドローする【∞/D/即】 『今は悪魔が微笑む時代なんだ』…墓地から除外されたモンスターカードはエンドフェイズ時に墓地に送られる【∞/D/永】 『北斗羅漢撃』…エンドフェイズまで相手は魔法・罠カードの使用ができない【1/D/起】 アイドルスキル【CP:0/100】 汎用スキル【CP:35/100】 『フィール』… 全ての決闘者に宿る力。 高めることで奇跡を起こす。 『精霊化』… 全ての決闘者に宿る力。 精霊が宿ることがある。 『デステニードロー』… 自身の運命力が高まったときに発動する。 その他【CP:20/100】 『兄より優れた弟など存在しない』…兄及び兄貴分がいるキャラの場合運命力上昇。弟及び弟分がいるキャラの場合運命力下降 デュエルディスク【CP:0/100】 デッキ内容「スクラップ+獣」 1スクラップ・サーチャー 2スクラップ・ハンター 3スクラップ・キマイラ 4スクラップ・コング 5スクラップ・シャーク 6スクラップ・ゴーレム 7スクラップ・ブレイカー 8スクラップ・マインドリーダー 9スクラップ・ワーム 10スクラップ・ゴブリン 11スクラップ・オルトロス 12スクラップ・ビースト 13スクラップ・ソルジャー 14レベル・スティーラー 15森の番人グリーン・バブーン 16機皇帝スキエル∞ 17機皇帝ワイゼル∞ 18チェーンドッグ 19紋章獣ユニコーン 20紋章獣レオ 21巌征竜ーレドックス 22死者蘇生 23ポンコツの意地 24スクラップ・エリア 25スクラップ・スコール 26スクラップ・ポリッシュ 27スクラップ・オイルゾーン 28ダブルサイクロン 29ブラックホール 30簡易融合 31サンダークラッシュ 32貪欲な壺 33スクラップ・カウンター 34スクラップ・クラッシュ 35幻獣の角 36激流葬 37つり天井 38デストラクト・ポーション 39鎖付き爆弾 40リビングデッドの呼び声 スクラップ・デスデーモン スクラップ・ドラゴン スクラップ・ツイン・ドラゴン アトミック・スクラップ・ドラゴン ブラック・ローズ・ドラゴン 恐牙狼ダイヤウルフ No.74 マジカル・クラウン-ミッシング・ソード フュージョニスト フラワーウルフ ナチュルガオドレイク えん魔竜レッド・デーモン 星能龍
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3361.html
爆発の直撃を受けたジョセフは朦朧とする頭を揺り起こす。攻撃が来ない。では奴は死んだのか? 周囲を見回すと、それはいた。倒れているデモニアックは自分同様意識を失っているのか、動く様子はない。 止めを刺さなければ。この機を逃せば勝ち目は薄い。XATの到着までも、そして倒されるまでにも大勢の人間が死ぬ。 身体を起こすと、全身が軋む。腕を動かす度に激痛が走る。それでも、剣を支えにして立ち上がる。 一歩を踏み出した瞬間、突如デモニアックが跳ね起きた。そしてジョセフに背を向けて走りだす。その先には、爆発によって空いた穴。 流石に状況の不利を悟り、逃げるつもりだ。現状では向かってこられるよりも性質が悪い。 ジョセフも痛みを堪えて追う。敵も相当のダメージを負っているのか、走るスピードは随分と遅いが、それでもジョセフよりは速かった。 「エレア!!」 ジョセフは声を張り上げる。ある種祈りを込め、この声が届く範囲にいてくれることを願いながら。 それに呼応して遠くエンジンの唸りが轟いた。 しかしまだ足りない。デモニアックは既に壁の穴から外に飛び立たんとしていた。 その時、ガルムのエンジン音とは別に、独特の風切り音。 それはセッテのブーメランブレード。いつの間に目を覚ましていたのか、ともかくジョセフの先へ回りこみながら、ブーメランはデモニアックを猛追する。 そしてデモニアックが空へと跳んだ瞬間、ブーメランはその両足を刈り取った。 これまで何度となく防がれた攻撃。それは敵が逃げに転じた時、初めて功を奏した。 デモニアックは空に放り出され、もがく様に姿勢を崩す。 ジョセフは足を止めない。飛行ができるなら、あの状態からでも飛ぶかもしれない。 ガルムの咆哮が近づく。一瞥したそれは戦闘形態でない、通常のバイク。ガルムはジョセフと同化することで、初めて戦闘形態を解放できるからだ。 融合している暇はない、その間に態勢を立て直される。 方法は幾つもない。いや、一つしかない。 「エレア! 俺を飛ばせ!!」 意図を汲み取ったのか、ジョセフの背後でガルムが加速。そしてデモニアックを追ってジョセフも跳ぶ。 計ったように正確なタイミングで、足裏にガルムが衝突。ジョセフを高々と空へと打ち上げた。 ガルムを蹴って跳躍し、剣を持った右手を振り被るジョセフ。その段になって初めて気付くことがある。 (距離が足りない……!) セッテが敵を減速させ、体勢を崩した。 ガルムがジョセフを加速させ、距離を縮めた。 それでも後わずか、ジョセフの剣は届かなかった。 当然、足場もない空中で移動する術などない。翼も魔力もないこの身では。 このままではデモニアックの逃走を許すばかりか、墜落する最中を光線で狙い撃ち。 この高さで受け身も取れず叩きつけられればどうなるか。たとえブラスレイターであっても死は免れない。 ほんのわずかの距離が果てしなく遠い。 自分はここで墜ちて死ぬというのか。彼――マドワルド・ザーギンにも届かぬまま。 あの男、ザーギンはブラスレイターを優れた者、選ばれし者と呼ぶ。しかし、そんなものはまやかしだ。 ブラスレイターとデモニアックに然して違いなどない。共に人の輪から外れ、神に拒まれた者。 信じている。ブラスレイターとデモニアックを隔てる距離、それは単なる位階などでは決してない、と。 違いがあるとするならば、それは意思。 思考でも本能でもなく、悪魔に身を堕としても祈りを捧げる心。 もしもその意思が残っていたならば、デモニアックとて埋まらない距離を埋めようとするだろう。それがブラスレイターとの距離であれ、人間との距離であれ。 そして、それを可能にするものが意志。 どれほど過酷な世界であっても、生きる価値を見出すもの。旅を止めぬ理由。 魂が研ぎ澄まされる。 衝動が強く身体を突き動かす。死ぬわけにはいかないと叫んでいる。 断じて死を受け入れることはできない。 この身に成さねばならない遺志がある限り。 故に埋めてみせる。この距離も、ザーギンまでの距離も。 力をみなぎらせ、ジョセフは身体を反らせる。右手に剣を握り締め、全身を限界までしならせた。 「おおおおおお!!」 雄たけびを上げ、極限まで溜めた力を解き放つ。 渾身の力で振り被った剣を振り抜く。 ジョセフの身体が縦に回る。ヨーヨーのように小さく、正確に回転することのみに意識を集中させる。 一度は空振り。しかしデモニアックが振り向くより僅かに速く、回転を重ねた二太刀目。 蒼白い光の刃はデモニアックの身体を肩から脇へ一閃。強靭な肉体を袈裟切りに両断した。 距離は埋まった。埋めたのはブラスレイターの能力ではなく、紛れもなくジョセフ自身の意志によるものだった。 ※ 誰もいない地上で一人、ディードは佇んでいた。見上げるビルでは激しい戦闘が続いている。 指をくわえて見ているしかない自分が悔しかった。だからといって、どうすればいいのかもわからない。 どちらが勝っても辛いことにしかならないのならば、いっそここで目を背けていたい。 やがて一際大きな爆発の数秒後、上空に影が飛び出し、それを追ってもう一つの影が。 それは漆黒の影。前者よりも明らかに濃い影は単に逆光によるものではなく。 戦闘機人の優れた視力は、起きたことの全てを脳に焼きつける。たとえそれが望まない事実であっても。 追いついた黒い影は一方の影を切り裂き、二つに分かたれた影は動きを止め、落下。同様に落下する漆黒の影には楕円形の物体が高速で接近し、急激に落下速度を緩めた。 「オットー!!」 高速で路面に叩きつけられたのは、かつてオットーだったもの。ディードはその傍らに駆け寄り、改めてその姿を確認した。 転がっているのは、右手と顔だけを残した無残な怪物。断面は組織の崩壊が始まり、塵に変わっていく。 オットーは息も絶え絶えに、何かを求めて手を伸ばす。 あれだけ猛威を振るったデモニアックが、それでもディードには酷く哀れに思えた。 「オットー……オットー……!」 掛けたい言葉は山ほどあるのに、言葉が出てこない。出てくるのは涙ばかり。 代わりに、伸ばした手をきつく両手で握るが、その手すら、自分の手の中で崩れていく。崩壊を止めようと力を込めても、弱弱しく反応を返すだけ。 「あ……ああ……」 オットーが、彼女の存在が指の隙間から零れていく。 零れた塵が風に流され消えていく。 痕跡一つ残さず、己が半身が消え去ってしまう。 共に生まれ、短い間とはいえ共に生きてきたオットーが死ぬ。たったそれだけの事実で、身体の半分が引き裂かれるような痛みが走る。 この気持ちを例える言葉は何だろう。こんなに強い感情が自分の中にあるとは思わなかった。 手の中の感触が消え、塵となって崩れ落ちた時、ディードは深くその感情を理解した。 それは理解した瞬間に爆発した。 その感情の名は悲しみ。 「オットー!! 行かないで、オットー!!」 既に首だけしか残っていないオットーを抱き締めるディード。頬を伝う大粒の涙が、血液すら涸れた皮膚をわずかに潤す。それでも崩壊は止まるはずもなく。 何か言ってほしい。できるならもう一度、目を見て名前を呼んでほしい。でも、それは無理だと心のどこかで理解している。 ディードは自分の身体で包みこむようにオットーを抱えた。 「ごめんなさい、オットー……私何もできなくて……!」 これが目を背けてきた代償。だとすれば、どうすればオットーを救えたというのか。 両手は自然と額の前で組まれ、地面に這いつくばる姿はまるで懺悔するかのよう。 せめて彼女の全てが消えてしまわないように。 冷たい風に流されてしまわないように。 彼女の存在した証を守ろうと、ディードは震えながらオットーの名前を呼び続ける。しかし、祈りが届くことはなかった。 「ディード……」 やがて胸に当たっていた感触が完全に消える。 その直前、オットーの声が聞こえた気がした。 真実はわからない。声はたちまち風に流れて消えてしまった。 ディードは、ただオットーの残滓にすがって嗚咽する。 そして丸めた身体を更に丸め、ほんの少しでも逃すまいと必死に塵を掻き集めた。 彼女の為に自分ができることは、もうそれしかないから。 それだけが唯一遺されたオットーの欠片だったから。 オットーより遥かに遅れて、ディードの前に降り立ったのは、ウェンディに手を掴まれた黒のデモニアック。 二人は塵を集めるディードを見ても何も言わない。ディードも、身体を丸めたまま動かない。 動けばオットーが風に流されてしまう。濡れた頬を冷やす風に、これ以上オットーを曝したくなかった。 歩み寄るウェンディは泣き出しそうな表情、デモニアックはもとより表情など読めなかった。 「ウェンディ……」 「ディード……」 「何か……オットーを入れるものを……」 淡々とディードは言う。その声にはまったく感情が籠っておらず、自分でもそのことに驚きもしない。どうやらすべてが抜け落ちてしまったようだ。 ウェンディは無言で離れると、しばらくして戻ってきた。 「ディード……これ……」 ウェンディが差し出したのは、小さな金属製の菓子箱。そこらに散乱した物から適当なものを見繕ったのだろう。 キラキラと安っぽい外装は、光の反射で見る角度によって色が変わった。 ウェンディも手伝って、無言で塵を掬い取っては缶に流し込む。座り込んだ二人はどちらからともなく、順番にそれを繰り返す。 黒のデモニアックの立ち会いの下、二人だけのオットーの葬儀は粛々と行われた。 塵を集めながら、ディードは思った。何故自分はこんなことをしているのだろう。 戦闘機人として生を受けた自分、ドクターの為に死ぬならそれでいいと思ってきた。でもこれは違う。こんな終わりは間違っている。こんな死は誰の為にもならない。 こうしたのは誰だ? そもそも何が間違っていた? 分からない。確かなことは、この気持ちを、奪われる悲しみの報いを、誰かに受けさせなければならないことだけ。 すべてが抜け落ちた空虚な胸に小さな炎が灯る。それもまた、これまで感じたことのない感情だった。 やり場のないこの感情を、どこかに吐き出さなければ気が狂ってしまいそうだった。 あの悪魔に、オットーを殺した悪魔に叩きつけてやらねばならない。 この憎しみを。 初めて生まれた感情を育てながら、ディードは表面上は淡々とオットーを集める。震える手の理由は、もう悲しみだけではなかった。 最後、塵とも砂埃ともつかない一つまみを入れて、ディードは缶に蓋をする。気づけば、隣にトーレとセインが立っていた。 顔を伏せたディードは幽鬼のように立ち上がる。虚ろな瞳は何も映さず、その手に握るのはオットーの入った缶ではなく、双剣ツインブレイズ。 自分はまだ、もう一つの弔いをしなくてはならない。 湧き上がる殺意は極力抑えたつもりだった。直前まで気取られず、確実に仕留める為に。 だらりと垂らした腕を跳ね上げ、地面を蹴ろうとした瞬間、背後から羽交い締めにされた。 「駄目ッス、ディード!!」 捕らえたのはウェンディ。 何故邪魔をするのか、彼女なら分かってくれると思ったのに。共にオットーを弔った彼女なら。 「放せ!!」 「こいつを殺っても何にもならないッス! それにあたし達じゃ勝てない!」 何度も何度も、肘をウェンディの腹部に叩きこむ。苦しげな呻きが聞こえたが構うものか。それでも掴む力は強まりこそすれ、弱まることはなかった。 デモニアックは微動だにせず、トーレがセインを振り解いてディードの前に立った。 立ち塞がるトーレの左手が動いたかと思うと。 パァンと乾いた音が響いた。数秒遅れて頬の痺れが伝わり、殴られたのだと気付く。 「子供の駄々に付き合っている暇はない。大人しくしていろ」 トーレは冷たい声で言い捨てると、デモニアックの方に向き直った。 「ドクターがお前と話したいそうだ」 それきりトーレはディードを一瞥もせず、会話を始める。完全な部外者扱いだ。 ディードは抵抗の意思を挫かれ、その場に立ち尽くす。オットーの仇討ちなど意味の無い些事だと姉に言われたことが、どんな説得や説教よりも気力を奪った。 張られた頬がじわりと痛い。涸れたと思った涙が再び溢れ出す。 ディードは崩れ落ち、顔を覆うと、声を殺して泣いた。オットーの死を嘆いているのは自分だけなのかもしれないとさえ思った。 自分がどれだけ叫ぼうと、この場ではさざ波のようなもの。邪魔にならないよう、独りで泣くしかない。それが酷く惨めで、堪らなく悔しい。 そっと肩に手が乗せられる。ディードが振り向くとそこには、同様に歯を食い縛り、顔をくしゃくしゃにして泣くウェンディの顔があった。 ※ 空中に浮かんだモニターに男の顔が映った。ジョセフにとっては初めて見る技術だった。 「初めまして、私はジェイル・スカリエッティ。彼女らの製作者、管理責任者、まあ父親だと思ってくれればいい」 胡散臭い男、それがスカリエッティの第一印象だった。顔に妙に薄っぺらい笑みを浮かべた白衣の男は、ジョセフの姿を見ても眉一つ動かさない。 「この度は、私の娘が大変な迷惑を掛けた。彼女はオットーと言って、君に斬りかかったディードとは双子だったんだよ。 いつも一緒で、とても仲が良くてね。残念なことだ……分かってやってほしい」 人間の姿だったなら、表情の変化を隠しきれなかった。斬ったデモニアックの身の上を聞いても無表情でいられるほど、ジョセフは割り切れてはいない。 この男はおそらくそれを知っていて、揺さぶりをかけている。なんのつもりかは分からないが。 「と……余計なことを言ったかな? 君には関わりのない話だった。それでどうだろう。 詫びと言ってはなんだが、君を私のラボに招待したい。色々と話を聞かせてほしい、君さえ良ければ」 「断る……」 ジョセフが答えに迷うことはなかった。この男は信用できない。 ディード、彼女にとっても、自分が招待されるなど望まないだろう。 返答に対し、スカリエッティはジョセフの予想外にあっさりと引き下がった。 「そうか、残念だが仕方ない。こちらも来客中ではあるし。しかし、せめて名前くらいは聞いてもいいだろう?オットーの父親として」 「ジョセフ……ジョブスン……」 「ありがとう。それではまたいつか会おう、ジョセフ。君達もご苦労だった。ただちに帰還してくれ」 通信が切れると、周りには新たに五人、見たことのない少女も二人いる。九人の戦闘機人は一様にジョセフを取り囲んでおり、いくつかの視線には明らかな敵意が込められていた。 「ドクターのご命令だ。戻るぞ」 トーレが言うと、他の少女達もそれに倣う。 彼女、トーレは他の姉妹に分からないよう、小さくジョセフに一礼して去った。 しかし何人かはまだ残ってジョセフを睨んでいる。当然、ディードもその一人。 ジョセフは少し逡巡した後、目の前で変身を解き、人間の素顔を見せた。 全員が目を見張る。ディードも同じく目を見開いていたが、すぐにその目は眇められ、 「ジョセフ・ジョブスン……その名前と顔、忘れない。絶対に……!」 そう言い残して飛び立った。重々しく掠れた、それでいて力強い声だった。 その瞳は例えるなら氷を内包した炎。激しいだけの怒りとは違う、静かで冷たい憎しみを孕んだ炎。 ディードが去ると、二人の赤毛の少女もそれに続いた。 「ジョセフ、どうして名前なんて名乗ったの。なんで素顔を晒したのよ」 「見ていたのか」 隣に停まったガルムからエレアが問いかける。露骨に不機嫌そうなエレアにも、 ジョセフは憮然として答えることはしなかった。 「あれでせめてもの償いのつもり? あの男の顔が娘の死を悼んでいる顔に見えたとでも?」 「別にあの男に対してじゃないさ」 「じゃあ、あの娘かしら? ジョセフ……あなたは間違ってないと思うけれど」 償う術などない。詫びるつもりもない。まだ死んでやることもできない。ならば仇の顔と名前くらいは知っていてもいいだろう。 間違っていないとエレアは言う。だが、あの目を見て、どうして自分が正しいなどと言えようか。 ようやく遠くからサイレンが近づいてきた。いつだって救いの手は来るのが遅過ぎる。だからといって、自分がそうであるとは口が裂けても言えない。 陽光に照らし出されるのは、横たわった死体と破壊された街。一台のバイクが遠く離れていく。それが去った後には、もう動くものは見当たらなかった。 XATの到着までに終わったことは、果たして良かったのか、悪かったのか。たぶん良かったのだと思う。 彼女達が去った方角を見つめるジョセフの目は、深い哀しみを湛えていた。 「……本当は泣きたい気分なんじゃなくって?」 「行くぞ」 エレアの言葉を冗談と受け取ったジョセフはガルムに跨る。襟首から自動で装着されるヘルメット。 それですべての音と感情を遮断してジョセフは前を向く。 そんなジョセフにエレアは呟いた。どこまでも不器用だと呆れながら。 「まったく……美しくないわ」 ※ 「恨みというのはいつ買うかわからん。たとえ正しい行いをしたとしてもだ」 時計は13時ちょうど。訪ねてきたシグナムの第一声はそれだった。 ドアに背中を預けた彼女は、言葉を尽くすというのは性に合わんと言いつつ、普段よりよほど饒舌だった。 「私達は自分の仕事の為、市民の安全を守る為に融合体を屠ってきた。だが、元を辿れば融合体も同じ人間。 殺せばそれを悼み、我々を恨む者もいる。それでも私は剣を収める気はない」 もしもティアナが、融合体になった姉や父が殺されたなら、自分はそれでも冷静でいられるだろうか。まったく恨まずにいられると断言はできない。 「融合体に関しては今も対策の研究がなされている。感染者を治療する方法は無いか、本当に殺すより他に手段がないのか、と。 だが、今危機に瀕している人間に、それを待てとはいえないだろう。ならば斬らねばならない」 「……だからティアも同じだってことですか?」 「お前にそう思えと言ったところで、できるものでもあるまい。ティアナも融合体も市民も命の重みは同じ、と言ったところで納得はできん」 しかし、と加えてシグナムは目を覗かせる。 今朝方見たなのはの目と同じ、確かな決意を秘めた視線は自分にはないもの。 「だからといって、綺麗事を否定して開き直った瞬間に我々の戦いは私闘になり、立ち行かなくなる。私もお前も、そういったジレンマ、一言でいえば業を背負っているということだ」 「業……」 「そこを考えず、二人を救いたいとのたまったところで耳を貸す者はいない。それだけは覚えておけ」 最後に、喋り過ぎた、とだけ言ってシグナムは歩き去った。 立ち尽くしたスバルはシグナムの言葉を反芻する。 シグナムの言うことは至極尤も、それでもスバルには割り切れるものではなかった。 融合体も元は人間であり、家族もいれば友人もいる。そもそもが死体でも、最近はそうとも言い切れない。生者がなる可能性も十分にあるのだ。 融合体の気持ち、周囲の感情。これまでは、なるべく考えないようにしてきた。その立場に立ってしまえば戦えないかもしれないから。 もっと考えておけばよかった。きっとシグナムもなのはも、自分なりの答えを出していたのだろう。 立ってみて初めて分かる。 これは――辛い。 スバルはベッドに寝転んでいた。何をするでもなく、何をしていいかも分からず。 眠る気にもなれず転がっていた時、ドアが小さくノックされた。 「スバルさん、キャロです。今いいですか?」 「うん、いいよ……」 覗き窓を見ても、姿はない。背が足りないのだろう。故にキャロの表情を窺い知ることはできなかった。 「あの……さっきエリオ君のお見舞いに行ってきました。2,3日は入院ですけど、すぐに退院できるそうです」 「そっか。良かった……じゃなくて、早く回復するといいね」 「はい。それで、あの……ティアナさんのこと、話を聞いてきたんです」 「ティアの……?」 「あの日とその前日に何があったのか、何か変わったことがなかったかを、看護師さん達に。……聞いてくれますか?」 自然と身を正すスバル。ティアナの身に起こった出来事、彼女の本心。それを知る為にはどんな小さなことも聞き逃す訳にはいかない。 深呼吸をし、緊張する胸に手を当てて答えた。 「うん、お願い」 「ティアナさん、スバルさんが来るまでは普通だったそうです。それが、夕食の頃から様子が変ったって言ってました。塞ぎこんで、何も話そうとしなかったと……」 「でも、あたしが言った時は普通だった。ううん、むしろ機嫌良さそうだった」 入院して以来、あれほど上機嫌なティアナを見たことはなかった。ただ一つ変わったことと言えば、クロスミラージュを持ってくるよう頼まれたことくらい。 あの瞬間だけは、どこか寂しそうに見えたのを覚えている。 「なんでもいいから教えて下さいって言ったら、スバルさんが帰った後、病室の前で世間話をしたらしいんです。スバルさんや私達がいつも傷を作って大変そうだって」 「え……」 「私達、ティアナさんの前では疲れてても、怪我してても元気そうに演技してましたよね。心配させないようにって。それがティアナさん、ショックだったのかも……」 それはスバルがティアナの前で重ねた嘘。だが、この瞬間キャロに指摘されるまで、それが問題だとは考えてもみなかった。 司令塔だったティアナが抜けてからというもの、出動、訓練共に三人は動きに精彩を欠き、大きなものではないが、ストレスや疲労は蓄積され始めていた。 それをティアナに気取られないよう、最初に取り繕うことを始めたのはスバル。エリオやキャロもそれに倣い、いつしか全員が嘘を吐く形になってしまった。 共通していたのは、心配を掛けたくないという思い。なのに、今になって急速に罪悪感が顔を覗かせる。 「でも、そんな些細なことで……」 「些細なことですけど、でも……私はちょっと分かる気がします。自分がちゃんと役に立ってるのか、ちょっと前まで不安になってたことがありました。 私は後衛で、傷つくのはいつもエリオ君やスバルさんばかりで……」 キャロの存在は必要不可欠であるが、その成果は目に見える形では分かり辛い。スバルもキャロが思い悩んでいたことは知っていた。その時は気付いてやれたのに。 「ティアナさんは、ああなっても役に立ちたかった。実感が欲しかったんじゃないでしょうか。自分には心配くらいしかできることがないから……私の勝手な憶測ですけど」 もうしそうだとしたら、スバルのしてきたことはすべて裏目だったことになる。 毎日、不必要なまでに順調さをアピールしていた。 心配するティアナの言葉をいつも流してきた。 ティアナの気持ちも考えずに、何十回と笑顔で疎外感を与えてきた。 それが彼女の為だと信じて。 相槌が返ってこないことで不安に思ったのか、キャロが慌てた声で言った。 「でも、これが正しいとは限りません。融合体になった理由は全然分かってませんし……。私にはティアナさんがそこまでショックを受けるとは……」 「キャロ……なのはさんに何か言われた……?」 キャロを遮って、唐突にスバルは話題を変えた。もうこれ以上、このことで会話を続けたくなかった。 キャロの前で自らの罪が暴かれるのが恐ろしい。そして、それを恐ろしいと感じることが情けなかったから。 「え、はい……明後日にはXATにティアナさんとヴァイス陸曹の手配が回る。その手で二人を殺すことになったらどうするかって……」 やはりなのはは、キャロにも同様の課題を出していた。エリオは入院しているからどうか分からないが。 本当は聞くべきではなかった。相談する内容ではないし、聞けばなのはに提示されたルールを破ることになる。 それでも、スバルは訊ねずにいられなかった。もしもキャロがティアナを救いたいと言ってくれれば。ほんの少しでも光明があるならば、自分も立ち上がれるかもしれないと。 「キャロは……どうするの?」 「正直分かりません……明日もう一度病院に行って、他に何か聞けるか試してみるつもりです」 「そっか……。ごめん、少し一人で考えさせて……」 互いの顔が見えなくて良かった。心底、スバルはそう思っていた。 平静を装っても、声の震えは隠せない。それは落胆と恥ずかしさによるもの。 キャロは手がかりを掴みかけている。少なくとも、手段すら分からない、分かってもままならない自分とは違う。 顔は見えずとも、スバルの様子を感じ取ったのだろう。キャロは、失礼しますとだけ言うと、静かに帰って行った。 なのはから突きつけられた選択。ティアナの真実。 思考の迷路に迷い込んだスバルに道を示してくれる者はいなかった。 「分からない……」 スバルは一人呟く。何が分からないのかも分からないほど、すべてが分からない。 スバルは再びベッドに寝転がっていた。仕方がない、それしかすることがないのだから。 目を閉じて、自分の世界に入る。ネズミ色の天井と儚い明りは見つめていると不安を煽られるからだ。 狭い独房では、自分の声も想いも全部跳ね返ってくるような錯覚に陥る。唯一外と繋がる覗き窓も、人が立たなければ無いのと同じ。 『彼女の気持ちが分からないのは、彼女の気持ちを理解しようとしていなかったから』 どこからともなく、不意に声がした。それは心の声、誰かに責められたいという自己満足が生んだ幻影だった。瞼の裏に浮かぶ声の主は、スバルと同じ顔をした分身。 「あたしはティアを一人にしたくなかった。傍にいて、笑っててほしかった」 『その為に吐いた嘘が彼女の孤独を助長した』 「本当は分かっていた。たぶん、キャロの言うことが正しいんだって」 『彼女は全てを失ったものと受け入れ、緩やかに、穏やかに諦める道を選びかけていた。それは薄々感付いていたはずなのに』 「裏切られたって思ったんだ、きっと」 『プライドの高いティアなら、そう思ってしまう自分が悔しいと思う……』 「つまりそれは……」 『全部あたしのせい……』 言葉を紡ぐごとに罪が浮き彫りになっていく。 最後の台詞は自分のものか、幻影の物だったか。スバルにも判断が付かなかった。 「あたしは、どうすればよかったんだろう……」 幻影は何も語らない。 それは欺瞞と偽善で凝り固まった自らの鏡像。スバルの答えられない問いに、答えられるはずがなかった。 『あの日、病院でも間違いはあった。彼女のことを顧みることもなく、見ていたのは自分ばかり』 「そんなことない……あたしはただ、ティアに謝りたかっただけ……」 『それが間違い。病院では己の贖罪を優先し、その結果彼女は罪を犯した。雨の中を探しても、事実に目を背け、求めていたのは都合のいい真実』 「……本当にティアを思うなら、首を絞める手を振り解いてでも、ティアの傍にいればよかった。どんな手を使っても、融合体になったティアを探すべきだった」 一つ一つ、答え合わせは続き、幻影はここぞとばかりに饒舌にスバルを責め立てる。 終わらない自己採点。それは、ある意味では自傷行為に等しい。最初から結果は落第だと分かっていても、せめて自身を痛めつけなければ、罪の意識に耐えられそうになかった。 朝のなのはとの会話を思い出す。 『他の融合体は殺しておきながら、仲間だったら助けたい。それは残酷じゃないの!?』 それに対して自分の反応はどうだったか。 『それはおかしいですか!? あたしは今もティアを仲間だと思ってます! たとえなのはさんにとって、ティアがもう融合体でしかなかったとしても!!』 感情に任せて酷いことを言ってしまった。なのはを怒らせてまで啖呵を切っておいて、何一つティアナを理解していなかったのは、仲間と思っていなかったのは自分の方。 それどころか、傷ついた彼女を一番追い込んだ。 いつもティアナに鈍感だの馬鹿だのと言われていたが、まったくその通り。救いようのない大馬鹿だ。 何としてでもティアナを救いたい。キャロが来るまでは、スバルも薄々ながらそう考えていた。もしそれが、管理局に背くような行為であっても辞さないつもりで。 今、その考えは大きく揺らいでいた。 ティアナから視力を奪い、夢を奪い、誇りと僅かな拠り所すら奪った。 無自覚の罪。これほど性質が悪いものはない。 おまけにそれが彼女の為だと思っていたのだから笑わせる。 こんなことでティアナを救えるはずがない。そんな資格があるとは到底思えなかった。 「ティア……あたし、もう……どうすればいいのか分かんないよ……」 声に乗せて放った迷いは、厚い壁に阻まれて宙を漂う。 行き場を失った想いの残骸が閉ざされた室内を埋め尽くす。 自分自身に押し潰されたスバルは、逃げるようにベッドの上で背中を丸めた。 現在時刻17時40分。 スバル解放まで残り、約16時間20分。 予告 虚ろな瞳が映すのは、温かかった昨日と灰色の壁。救いを求める子羊は、己の形すら見えていない。 第4話 慰めの対価 使命と願望の狭間から生まれ出でた物は、果てなき試練への片道切符。 前へ 次へ 目次へ
https://w.atwiki.jp/misyeru/pages/144.html
imageプラグインエラー 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 小型の肉食性の鳥竜種のオス。 基本的に群れで行動しており、ハンターを見つけると集団で威嚇しつつ、1頭ずつ噛み付くなどの攻撃をしかけてくる。 リーダーのドスジャギィが一緒に行動している時は、リーダーの指示に従って、統率のとれた行動をとるようになり、ハンターに対して集団で連続攻撃をしかけてくるようになる。 攻撃的だが、火を怖がる習性を持ち、たいまつを向けると近寄ってこれない。
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/671.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >WORKING!!>WORKING!! 第3話「八千代と杏子と佐藤…と、帰ってきた音尾さん」】 WORKING!! 第3話「八千代と杏子と佐藤…と、帰ってきた音尾さん」 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れるWORKING!! 第3話「八千代と杏子と佐藤…と、帰ってきた音尾さん」の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 veoh Watch Working!! Episode 3 in ã¢ãã¡ | View More Free Videos Online at Veoh.com MEGA このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画WORKING!! コメント(感想) 動画WORKING!! 第3話「八千代と杏子と佐藤…と、帰ってきた音尾さん」に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/41.html
546 名前: Double/stay night ◆SCJtHti/Fs 投稿日: 2006/08/26(土) 17 03 14 弐 バゼット・フラガ・マクレミッツと名乗った。 世の中に魔法なんて都合のいいものは存在せず、だからこそ人々は自分の力で必死に生きていく必要がある。 それを、士郎の父親は存命中、口を酸っぱくして教え込んだ。 それでも、と士郎は考えずにはいられない。 もしもこの世にそんな神秘的な力が実在したとしたら、今夜のような悲劇も少しは減ってくれるのではないか、と。 そう夢想する事自体、自分が弱い存在だと証明するに等しいと分かってはいたのだが。 「坊ちゃん。組長が呼んでいます」 仲間内でタカと呼ばれている男はそういって、いつまでも女性の亡骸の隣に座り込んでいた士郎の肩を叩いた。 士郎の瞳は悔しさに塗れ、助けられなかった誰かの手を、あれからずっと握りしめている。 「しっかりなさい、坊ちゃん。 人間だれしもいつか死にますし、死んだ人間は生き返らないんですから」 タカに教えられるまでもなかった。 士郎はあの大災害を生き延び、養父の死を看取っている。 今までどれほど願っても、死んだ人には会えなかった。 そして、この女性にも、これから先、二度と会う事はできないであろう。 「ええ。分かってます。大丈夫。タカさん、俺は大丈夫だから。 爺さんが呼んでるって? 分かった、顔を洗ってからいくって伝えてください」 タクシーを走らせて藤村邸についたとき、既に女性は生死の境をさまよっていた。 駆け付けた医者が呆気に取られるほどの重傷。 左腕は非道にも切り取られ、胸にも深い刺し傷があった。 奇跡的に心臓と大動脈は無事だったが、絶望的に血が足りなく、肺には穴が開いていては、 いくら藤村組が信頼する外科医であっても、できる事などほとんどなかった。 未だ生きている事自体が常識では信じられない奇跡だったのである。 女性は最後に意識を取り戻し、士郎だけに看取られる事を望んだ。 彼女は自分の手荷物は全て焼き捨ててくれと遺言を残し、夜の街は危ないと警告をした。 何があったのかと士郎は尋ねたが、女性は聞かない方がいいと首を振るばかり。 そして彼女は、残された時間の全てを、穏やかな沈黙で使い切ったのである。 洗面台で顔を洗いながら、士郎は女性の最期を反芻していた。 彼女の死に、どんな意味があったのだろう。 士郎には何もかも分からない事だらけだったが、一つ確かな事があった。 街には今、彼女を殺した何ものかが潜んでいる。 その正体など分からなかったが、非常識なほど残酷で危険な存在だと言う事だけは嫌になるほど実感できた。 明日になれば警察も動き出すだろう。藤村組も黙ってはいない。 士郎の胸の中にも、猛々しい怒りの炎が芽生えていた。 父親の残した正義の味方という淡い理想は、今使われずにいつ使われるのか。 これ以上彼女のような犠牲者を出してはいけない。 その日の夜風は、暗い闇の匂いがした。 「―――先輩が?」 「ああ。だから今日は学校を休んで、爺さんと一緒に事情聴取受けてくる」 「そう……、ですか」 「大丈夫よ、桜ちゃん。お爺さまと一緒なら心配する事なんて何もないから」 大河の言葉にそうですね、と頷いて、間桐桜は箸をおいた。 桜にはすぐに理解できた。女性を襲ったという凶悪な人物。 それは十中八九サーヴァントだろう。その女性は魔術師だったか、あるいは魔術師に関わりある人物だったのか。 聖杯戦争が始まろうとしているこの時期、 不自然なまでの生命力を持った異邦者が被害に遭ったというのなら、それ以外考えられるはずがない。 「……桜? どうした、顔色が悪いぞ」 「いえ、何でもありません。ただ、食事中にするお話じゃないですよ、それ」 「わ、悪い……。ごめん、桜」 「いいえ、もう大丈夫ですから」 桜はそっと決心した。守らなければいけない。この人たちを。 桜を暖かく迎え入れてくれた優しい人たちは、何も知らず、何にも関わらず、日なたの道を歩んでいかなければいけないのだ。 しかし相手がサーヴァントなら、彼女だけの力で対抗できない。 桜には誰かの力が必要だった。信頼でき、力強く、頼りになる大きな力が。 それは―――。 壱 間桐臓硯しかいない。 弐 遠坂凛しかいない。 参 監督者しかいない。 死 ……誰も、いなかった。